『プロジェクト・マネジメント』
2010年1月12日□-------------------------------------------□ http://seosem.ioi1.net/dt_crossrecommend.html
『プロジェクト・マネジメント』
実用企業小説 プロジェクト・マネジメント作者: 近藤 哲生出版社/メーカー: 日本経済新聞社発売日: 2004/01/07メディア: 単行本 無理な受注がたたり開始直後から大赤字が確実視されていたシステム構築プロジェクトに送り込まれた主人公が、プロジェクトを立て直していく姿を描いた小説。「プロジェクトは人や社会を幸せにするものでなければならない」という著者の持論に基づき、プロジェクトの過程におけるマネジャやリーダーの心情の移り変わりを詳細に記している。20数年にわたる筆者の実体験を参考に書かれたストーリーだけに、説得力がある。トリバンドラム出張には何冊か未読の蔵書を携行したが、取りあえず自分の出番が終わった後、集中して読んで一晩で読み終えたのがこの1冊。「実用企業小説」と銘打っているため、あまり小説としては面白さは感じなかったが、かなり役には立ちそうな本だとは思った。
無理な受注がなぜ行なわれるのか、無茶な受注をやって後で受注側がどのような困難に陥るのか、僕は時々考えることがある。赤字かどうかはわからないが(多分そうなんだろうけど)、業者に無理な受注をさせてしまったかもしれない工事が身近なところにある。施主側は、なんで受注業者が見積額を何度も変えてくるのかがわからず、安易に費用の引き上げを狙っているのではないかと不信感をつのらせている。このままではいけないのではないか、工事が終わった後、発注側・受注側ともにハッピーになれないのではないか、そんなことを考えているところだ。どうしたらお互いにもっと歩み寄れるのか。本書は受注業者側の立場で書かれているが、発注者側からの働きかけで何かできることはないものだろうか。そんな問題意識で読んだ。残念ながら、受注業者側がどう変われるかというのはわかった気がするが、発注者側はある程度は待ちの姿勢でおらねばならないのではないかということも感じた。
当面僕にできることといったら、受注した業者の現場での作業をもっと理解する努力なのかもしれない。現場での作業を受注業者に任せっきりにせず、今何が起きているのか、無理してももっと現場に足を運んで見る努力をすれば、現場はもっと心を開いてオープンにいろいろとお話していただけるようになるのではないかという気がする。突き放しておいて相手を悪しざまに言っていても、良い結果など得られるわけがない。
「プロジェクトは人を幸せにするものでなければならない」
やってて面白くない仕事は完成させても幸せには感じられはしない。本書で言われている究極の指摘はそのとおりだと頷かせられるところが多い。ただ、本書に書かれているようには簡単には行きませんよという気もする。プロジェクトマネージャーの主人公が、「もう犠牲者は出すものか」とか「プロジェクトは人を幸せにするものでなければならない。その成功法則を俺が見つける!」と気合満々に臨んでいても、本書を読むと主人公が自分でいろいろ動いているというよりは、結局のところはチームのメンバーを上手く動かして仕事に仕向けているところの方が多いように思った。プレーイング・マネージャーではなく、マネージャーは人を動かす、動く人をうまく確保してきて配置するノウハウを持っていることが重要なのかなという気がした。あとはネットワークだろうか。どこにどのような経験と知識、専門性、興味を持った人が眠っているのかをちゃんと把握していて、適宜思い出してこれるか、そしてそういう人材を自分のチームに引っ張って来れるかはプロマネのノウハウだ。
自分はまだそこまで行っていないと思うが、もう少し人をどう使うかを考えた方がいい。但し、1つだけ突っ込みを入れたいと思うのは、社員は皆優秀で適材適所で働き場を提供すれば組織は上手く回るというのは出来過ぎた話だということだ。おだてても怒鳴っても全く動かない部下を抱えた時、お陰で迷惑を被って多く働かされる他の同僚にストレスをあまり与えずにその部下を普通に働かせることができるようにするにはどうしたらいいのか、僕は本書を読んでも答えを見いだせなかった。仕事のできない奴はそもそもプロジェクト・チームにも呼ばれないのだろうが。今の僕が直面している1つの大きな課題は、全く機能していない部下にそれでも彼が機能する場を探して配置することを考えるのか、それともいっそのこと引導を渡すかという究極の選択である。
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